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オフィスの先輩が、読み終わったというのでかしてくれた本。

医師が書いた本ですが、内容的にはSTAP問題に触発されて営利目的で出版された数多くの便乗本と大差ありません。任期付博士研究員(ポスドク)がおかれた厳しい研究環境と、予算配分や・研究者の評価をとりまく問題、たとえば「競争的資金の不透明な審査」、「有名論文雑誌に掲載されることだけを目指した研究テーマ設定」、「短期的に成果を上げることを強調しすぎるあまり使い捨てられるポスドクたち」について、著者の主観にもとづく評価(といっても、ポスドクのおかれた状況はヒドいヒドいと嘆いているだけ)と、いくつかのエピソードが(水増し的に何度も何度も繰り返し)載っているされるだけで、定量的なデータに基づいた論評はごく一部です(しかも手に入りやすい資料に掲載されたデータを自分でプロットし直しただけ)。

プロの医師の文章として気になるのは、「かもしれない」が多いところと、文の最後が「、、、」となって、ポイントを明示せずに濁して終わるところ。前半は(誰かのデータをプロットしただけだとしても)定量的な数字やデータが示された文章が多いものの、後半になると息切れして、内容を膨らませるために「かもしれない」のような著者の想像にもとづく記述が増える。とくに194ページの

笹井博士を著者に加え、あるいはレータの論文で責任著者にしたのは、笹井博士が何度もネイチャー誌に論文を掲載している有名人だからなのだろうか。論文の採用の確率を高めるために、笹井博士の名前が著者に必要だったのではないか。その御礼として、責任著者をプレゼントしたのかもしれない。

という箇所と、

もっとも、2014年6月13日に公表された理研の研究不正再発防止のための委員会の提言書は、笹井氏がSTAP細胞の研究に主体的に関わっていたとしているが……。

という箇所。2ちゃんねるの書き込みと大差ない。

amazonのレビューで高評価の人がいることが驚きですが、中には「ブラックだ、奴隷だと煽っても問題は解決しな/ゆうさん」のように、冷静な評価もあってほっとします。ポイントとしてあげられた『特殊な例を基に一般化しすぎ』『ポスドクや大学院生に対する視線に暖かさが感じられない』というのは、ふた言でこの本を評していますね。

広島大学の長沼毅先生の本といい、IPMUの大栗博司先生の本といい、内容のレベルの高さ、プロフェッショナル度に期待して期待して読んだ本が面白くないと、反動でがっかり感がすごい(とくに新書については、タイトルと中身が一致しないものを出版社業界全体として自主規制し、取り締まるべき。タイトルに引かれて買った本に、知りたいことが書かれていなかったときのがっかり感は、出版不況に十分役立っていると思う)。すでにいろんな人が同じようなことを言っていて、たとえばここ(天漢日乗)には

そうした研究者が書く新書は、どうしても水増しが多い文章になるし、
 出版点数は多いが、つまらない本も多いので、本が売れなくなる
という悪循環をもたらしている。

とコメントされている。

20140913読了。