Thunder Cloud Project – クラウドファンディングによる雷雲の観測実験

Pocket

【8/18 22:50の追記】すでに15人の方がサポートを表明してくれています!ありがとうございます。

突然ですが、8月17日から大学時代の研究室の先輩 榎戸輝揚さん(現在 京都大学)とクラウドファンディングのプロジェクトを始めました。普段は人工衛星を使って宇宙の観測をしている二人が、日本海側地域の冬の雷雲の中で起きている「静電場による粒子加速とガンマ線放射」という不思議な現象に、観測実験から迫る研究プロジェクトです。今回のプロジェクトを3分で解説したビデオを作成して、リンク先のプロジェクトページで公開しているので、ぜひご覧ください。ぼくは、ガンマ線検出器の電子回路の設計・製作と観測データ処理のためのソフトウエア開発を担当します。

このプロジェクトでは、学術系クラウドファンディングサイトの「アカデミスト」のプラットフォームを利用し、2015年8月17日〜10月15日の60日間にわたって、目標金額100万円を設定して皆さんからのご支援を募っています。いただいたご支援は、ガンマ線観測装置の製作や観測を実施する石川県もしくは福井県の実験場所への旅費などに使わせていただきます。支援金額によって、特製のクリアファイルやマグカップ、USBメモリなどさまざまリワードが用意されています。詳細はリンク先でチェックしてみてください。

Thunder Cloud Project / アカデミスト

thundercloud_project_screenshot_as_of_20150818_0908

 

以下、やや長いですが、背景の解説です。

「粒子加速」は、宇宙空間の様々な場所、たとえば太陽表面での爆発現象(フレア)や、中性子星(直径10kmで地球の45万倍くらいの質量という超高密度の星)の近くなどで、電子や陽子が高速に近い速度まで加速されていることが知られています。宇宙空間で加速された粒子(宇宙線)の一部は地球にも到達して、1分間に数百個くらい私達の体を突き抜けています(ただし、大部分は飛んできた宇宙線そのものではなく、宇宙線と地球大気の原子がぶつかって生成されるμ粒子)。宇宙空間で起きている粒子加速では、粒子へのエネルギー注入に「磁場」が大きな役割を果たしていると考えられています。

また、人工的には理研のRIBFCERNLHCに代表される「粒子加速器」の中で起こすことができます。一方で、宇宙空間や加速器の内部と比べると、大気中では、加速された粒子にとってエネルギーロスの原因となる大気分子がたくさん存在します。そんな状況の中でも、特定の条件がそろうと、冬季の雷雲の中で数秒から数分にわたって粒子加速とガンマ線放射が持続して起こるようです。雷雲中には強い磁場は存在せず、雷雲の内部に蓄えられた正電荷と負電荷がつくる「静電場」が粒子の加速を担っているはずです。

ポンチ絵

今回のプロジェクトでは、屋外に観測装置を設置して、雷雲で粒子加速現象が起きた時に放射されるガンマ線(可視光よりも1万〜100万倍くらい波長の短い光=エネルギーの高い光)の個数やエネルギーを測定することで、雷雲内での粒子加速領域のサイズや加速現象の時間的な変化を捉えたいと考えています。これにより、私達に身近な雷雲が、どのように「自然の加速器」として働いているのかを理解するとともに、宇宙空間の様々な場所で起きている粒子加速現象との関連性を調べる足がかりとします。

今回のプロジェクトは市民科学プロジェクトとして進めたいと考えています。得られたデータは、ウェブブラウザ経由でみなさんにも見ていただけるように整理します。日々生成される大量の観測データの中から、雷雲からのガンマ線放射現象を見つけ出す作業をみなさんにも協力していただけるようにします。イメージとしては、わたしも翻訳に参加した市民科学プロジェクトZooniverseの各サブプロジェクトのようなイメージです(過去記事「Planet Fourを翻訳しました」)。

クラウドファンディングプロジェクトが目標金額を達成して、観測装置の製作が進められれば、今年(2015年)の冬から観測を開始できる予定です。みなさんも一緒に雷雲の謎に迫ってみませんか!

thundercloud_project_02

なお、今回のプロジェクトに際し、説明のための図やリワードのデザインをアダチ・デザイン研究室に協力いただきました。