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帯には東京大学の書籍部でよく売れた本とあって、読んでみるとなるほど大学の教養課程の教科書にちょうど良さそうなトピック。日本のいわゆる田舎にある自然(この本で具体的にでてくるのは、木材の有効利用)や境界条件を活かして、マネー経済にたいするalternativeを構築しましょうというのがメインテーマ。「2011年の震災のときに、お金があってももの(食料)が買えない、ということに対する恐怖を感じましたよね」「大規模に集約された生産体制と広域の流通システムは効率的な反面、一旦システムが停止すると影響を受ける範囲も大きくなる」「より小さな単位、地域(田舎の市とか町とか)や近所の単位で、自給できるところは自給する仕組みをつくることはできます」「たとえば○○市の■■さんは、、、」という流れであとはいくつかの事例が紹介されるスタイル。NHKの取材班メンバーが章ごとに分担して執筆しているので、例え話や情緒に訴える記述ばかりが続く、ロジックの淺い章があったり、章ごとの内容の重複もかなりもあります。あとがきに相当する藻谷さん担当の章で述べられる『「日本経済ダメダメ論」の誤り』は、ちょっと前まで(今でも)深刻な問題とされていた「デフレ」の本質を、経済の専門家出ない人にもわかりやすく説明してくれていて、良文。日本的なデフレは、「人口減少と供給過剰による値崩れ」であって、イノベーションとか成長戦略と言われているものが要請している具体的な行動は「企業による飽和市場からの撤退と、新市場の開拓」というのも、わかりやすい。日本の貿易収支や国際収支の定量的な数字やグラフが出ているのも参考になりました。

現代の大量生産・消費型の資本主義は限界で、それを駆動するマネー経済から離脱、もしくはちょっと違う経済を併用する選択肢もあるという思想は、最近流行っているんですね。この点では高城剛の書いていることと方向性は似ているのですが、「里山」に関連する人々を説明する中で、高城剛の嫌いな「スローライフ」などの安易な単語も登場するので、各論では相違があります。高城剛のように、世界をめぐって流動性を志向する人もいれば、この本のように、田舎にあるリソースをうまく活用して都会とは違う生活をしましょうという人もいて、マネー経済から脱却するというのも流派よって具体的な実践についてはさまざま。また、ぼくは石川県出身で、高齢化したりお金を稼げる地場産業がない田舎の状況を体感的にわかっているつもりですが、ずっと東京で育った人の場合は、この本で紹介される取り組みを違ったふうに感じるかもしれません。

20150908 Cubesat Symposiumでベルギーのリエージュに向かう電車の中で読了。