GROWTH FPGA/高速ADCボード – 1 – 概要など

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左がGROWTH実験用のFPGAボード。右がRaspberry Pi3。
左がGROWTH実験用のFPGAボード。右がRaspberry Pi3。

昨年アカデミストを通じてクラウドファンディングにも挑戦した「雷雲ガンマ線実験(雷雲中の高電場での粒子加速に迫るための実験 = GROWTH実験)」の、2016-17年の冬シーズンの観測実験にむけて、ガンマ線検出器の小型化と多点観測にむけた量産を進めています。(ちなみに実験の初期の頃の信号処理システムは、大型のデスクトップマシンと「VME」や「NIM」という規格のこれまたデスクトップPCくらいのサイズのADC/アンプボードでした。これらを格納するために人が入って数日暮らせるくらいの大きさのアルミフレーム製の小屋を(榎戸さんが)作って観測場所に持って行きました。信号処理回路やPC、データ記録装置(SDカード)まで含めて10cm角サイズに収まるようになったことは感動的なエレクトロニクス技術の進歩です)

雷雲ガンマ線実験(GROWTH実験) – 京都大学の榎戸さん、原研の土屋さん、東京大学の中澤さん、和田さん、奥田さん、理研の中野さんなどと進めている楽しい基礎科学の観測実験プロジェクト。2015年度の観測結果のまとめは「冬季雷雲のガンマ線測定を狙う多地点観測システムの新規開発」(榎戸、湯浅、和田ほか 2016年5月)を参照してください。

先日、榎戸さんの研究費でシマフジ電機とともに開発したFPGA/高速ADCボードが届いたので、週末や夜の時間をつかってFPGAのコーディングを進めました。2015年度の観測装置のSpartan-6 FPGAボードで動いていたパルス計測用のVHDLコードが、今回のボードのArtix-7 FPGAとAD9231という50Mサンプル/秒のADCチップでも動作するようになりました(8月最終週)。また、9月3-4日の週末を使って、このFPGA/ADCボードに載せてあるSPIのSlow ADC/DACとLED、GPIOピンをRaspberry Piから制御することもできるようになりました。

今後何回かに分けて、このボードの試験の様子をレポートしていきます。このボードを使う実験メンバや、他の実験向けに利用してみたいという人の参考になれば幸いです。

【2016年12月28日追記】
GROWTH関連の成果物(ハードウエア/ソフトウエア)を利用する人が、使い方やコードの改良について質問・議論するためのGoogleグループ「GROWTH Users Group」を作成しました。Googleアカウントでログインすれば誰でも登録申請できるようにしているので、興味のある方は登録してみてください。

GRWOTH FPGA/ADCボード関連の記事一覧

  1. GROWTH FPGA/高速ADCボードの概要
  2. GROWTH FPGA/高速ADCボードの拡張コネクタ
  3. GROWTH FPGA/高速ADCボードのFPGA書き込み
  4. パルス計測プログラムgrowth_daqのビルドと測定実行

初回はボードの概要と仕様をまとめます。

GROWTH FPGA/ADCボードの概要

  • Xilinx Artix-7 FPGAと4ch×50Mspsの波形取得型ADC搭載(好きな波形処理を記述できる)
  • 95mm×95mmと、とても小型 (見た目がかっこいい!)
  • Raspberry Piと自作のアンプボードを搭載するための拡張コネクタを2個搭載
  • Raspberry PiやMacとUSB 2で接続して、パルス波形や波高値の取得が可能
    (Macでデータ取得プログラムを走らせる場合は、Raspberry Piはなくても動作します)
  • FPGAおよびRaspberry Piから制御可能なGPIOとLEDを搭載
  • 必要な人には必要な、高速通信用のSpaceWire用コネクタを1個搭載
  • 雷雲ガンマ線実験だけでなく、他の高エネルギー宇宙物理学実験にも応用できるかも?

GROWTH FPGA/ADCボードの仕様

機能 仕様
FPGA Xilinx Artix-7 XC7A35T-1FTG256C
システムクロック50MHz
ADC AD9231BCPZ-65 × 2個 (チャネル数合計 4ch)
サンプリング周波数: 最大65Msps 分解能: 12bit
アナログ入力: ±5V、入力インピーダンス50オーム
入力コネクタ: LEMO QLAもしくは拡張ピンヘッダコネクタ
Slow ADC/DAC ADC: MCP3208-BI/SL (8ch 12bit) 入力範囲 0〜3.3V
DAC: MCP4822-E/MS (2ch 12bit) 出力範囲 0.01〜3.26V
インタフェース: SPI
温度センサ LM60BIM3 × 2個(FPGA近傍、DCDCコンバータ近傍)
電流計測 LT6106HS5 × 3個 (12V、5V、3.3V)
出力値はMCP3208 (Slow ADC)に接続
通信I/F FT2232HL × 1個 (USB-UART変換 1ch、USB-FT245変換 1ch)
拡張コネクタ Raspberry Pi用: 2×20ピンソケット
ドーターカード用: 2×20ピンソケット
LED FPGA汎用 4ch(橙)、Raspberry Pi用 2ch(青)、
Config Done/Power 2ch (緑)、通信I/F用 2ch (赤・緑)
スイッチ スライドスイッチ (Raspberry Pi GPIOに接続) 1ch
Resetスイッチ 1個
電源 入力電圧 12V (DCジャックまたは3ピンコネクタ経由)
サイズ 95mm × 95mm × 29mm

電源構成

このボードは、12VのACアダプタ(2.1mmプラグ)か直流安定化電源を用いて駆動できます。電源構成は以下のようになっています(シマフジ電機の仕様書より引用)。

12Vから5V、3.3V、FPGA用電源を生成します。5VはRaspberry Piを駆動するためにも使用されます。根本の12Vと、5V、3.3Vの各電源レールにLT6106を用いた電流計測回路が付加されています(電流値はSlow ADCでAD変換されており、Raspberry PiからSPIで読み出し可能)。

growth_fpga_adc_powercircuit

組み上げ後の外観

組み上げるとこんな感じになります。かっこいいですね。この上にさらに和田くん作成のドーターカード(PMT用アンプと高圧電源モジュール×2個が、もう一つの拡張コネクタ経由で接続されます)。ドーターカードが届いたら、その写真も更新します。

うちの実験で使ってみたい

このFPGAボードに興味がある人は榎戸さん湯浅に連絡してください。共同研究できるとよいですね。ちなみに、VHDLのコードはgithubに出ています。参考にしてください。FY2016のVHDLコードも完成したらgithubに載せます。