ASTRO-H関連のオンライン資料
わたしが2008年から打ち上げ直後の2016年まで参加していた日本のX線天文衛星「ASTRO-H」(打ち上げ後は「ひとみ」)は、打ち上げ後、1ヶ月ちょっとしか動作しませんでした(スタートラッカーの不適切な設定・不適切な動作と、セーフモードでの姿勢制御パラメタの不適切な設定が引き金となって、姿勢制御が破綻して高速回転し、衛星の構造が分解して全損)。2022年のいまにしても、とても残念です。
わたしは2015年の終わりに、大型衛星の開発はいったん見切りをつけて、Cubesatを使った地球観測の仕事をすることに決めて、軌道上での事故が起きたときには新しい職場のシンガポールに引っ越していました(マンションを探すために滞在していたホテルでプロジェクトマネージャからのメールを読んだときのことをいまでも覚えています)。事故後の調査や代替機(XRISM計画)の計画立案・開発・試験などは、外部から応援しているだけでした。
2017年頃にみていた資料のリンクがメモに残っていたので、網羅的とは言えませんが、自分の記録用に公開しておきます。
- 深沢泰司(広島大理), X線観測衛星の開発と大学院教育
- 藤本龍一(金沢大), 田代信 (埼玉大), ASTRO-Hに対する高エネルギーコミュニティの総括と今後の方向性について, 2017年1月5日 第17回 宇宙科学シンポジウム
- 飯塚 亮(JAXA) ほか, 「ひとみ」搭載バス系機器の軌道上性能
- 飯塚さんとは、石田先生・上野さんとともに、進展マストの変形具合をはかるレーザー変位計「CAMS」(カナダ宇宙庁の貢献)の試験で一緒に働きました。
- 武内信雄 (JAXA), X線天文衛星「ひとみ」運用異常で改めて認識した 宇宙開発を取り巻く状況変化と対策 ~今後に向けたメッセージ~
- 常田佐久 (JAXA), X線天文衛星代替機の 検討状況について, 2016年9月29日
- 宇宙開発利用部会(第35回) 議事録, 平成29年5月30日
- 常田佐久, 久保田孝, X線天文衛星ASTRO-Hの プロジェクト終了について
- 久保田孝, ASTRO-H終了審査および Lessons and Learned, 宇宙科学シンポジウム, 2017年1月5日
- 常田佐久 (JAXA), スペースミッション 展望, 日本学術会議シンポジウム 「天文学・宇宙物理学 さらなる地平を探る」, 平成29年 3月11~12日
- 米徳大輔(金沢大学), 今後20年の宇宙科学の方向について 〜理学の立場から〜
- 久保田孝(JAXA), 宇宙科学プロジェクトの進め方, 宇宙科学シンポジウム, 2017年1月5日
- 満田和久(JAXA), 新しいミッション創出と キー技術開発、大学連携, 第17回宇宙科学シンポジウム
- 今村 剛 (東京大), 「20年委員会」が目指すもの
- 「20年委員会」のほとんど内容のないスライドをみていると、もう宇宙研も理学・工学コミュニティの大学の先生たちも、具体的な科学目標やそれを実現する組織づくりについて、あんまりいいアイデアないんだろうかと残念です。
- 40歳代の人たちまで「若手」とかいってるんじゃなくて、本当に若い人たちにドバっとお金をつけて自由に失敗できる環境を作れたらいいですね。
- 常田佐久, 宇宙科学・探査に関する工程表 の進捗状況について, 平成29年8月18日
ちなみに、ASTRO-Hの初期観測で得られたペルセウス銀河団の銀河感ガスの重元素の存在比が太陽系のそれとほとんど違わないという発見の論文は、榎戸さんや和田さんが実験を手動し論文を執筆した雷雲ガンマ線フラッシュにおける光核反応の論文ととなりあわせでNature本誌に掲載されています(わたしは装置・データ取得ソフトウエア開発に貢献)。
- Hitomi Collaboration, “Solar abundance ratios of the iron-peak elements in the Perseus cluster”, Nature volume 551, pages 478–480 (2017)
- Enoto et al., “Photonuclear reactions triggered by lightning discharge”, Nature volume 551, pages 481–484 (2017)
まったく関係ないですが、日本の宇宙開発に関連してやめたらいいことのリスト。
- JAXAのプロジェクト関係者が、ペラペラの灰色の作業着みたいなのを着てメディアにでるのはほんとうにダサいので、やめたらいい。もっとおしゃれな、子どもがあこがれるような服装で写真をとって、テレビにでて。
- Pre-phase A1bとかPre-phase A2とか、もうその名前を言っている本人たちも、具体的に何がどうなっているのかわからないプロジェクト審査計画。300億円つかうのに値するプロジェクトか、そうでないかは、プロジェクトを提案している本人たち自身がよくわかっているのだから、もっと正直に。