【読んだ本】岡田光世/ニューヨークのとけない魔法

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奥さまはニューヨーカー」の原作者の、ニューヨークでの日々を記録した短編エッセイ集。各話が2-3ページと短いので細切れの移動時間にも読みやすいです。アメリカに行ったことがある人は感覚的によくわかると思いますが、なんというか、アメリカに住む人々の闊達さを良く感じられるエピソードが多く掲載されています。

ぼくもこれまで何度か北アメリカの短期滞在を繰り返して、日本とアメリカ的感覚の違いをうまく言葉にできないながら、「関係ない感」だなーと思っていました。日本(中国の儒教文化を根っこで共有する東アジア圏は、でしょうか)は、いろんな物事が自分に関係があると思い込んで、他人の目が気になったり、他の人からどう見えるかということがその人の中で重要な要素になることがあります。それは別に悪いことではなくて、欧米から来た研究者がACアダプタを忘れたときに家電量販店に行って、伝わらない英語でコミュニケーションしたときの話として、「店員はまるで自分のことのように心配して代替品を探してくれた。結局自分のラップトップにつながるものは見つからず、非常に申し訳なさそうにしていた 。私の国では『商品の在庫がなくてあなたが困るのは、我々が関知する問題ではない』と言われるよ」ということがあったと感動していました。個別にはこういうこともあるのですが、なぜか全体としては、ずーっと満員電車の中のようなぎくしゃくした感じの社会になってしまっています。

逆に「関係ない感じ」の社会だと、コーヒーショップの店員や、路上ですれ違う人と、気軽に挨拶しあえたり、この本の中のエピソードでは地下鉄の中で本を読んでいたら、隣に座った乗客に「私もその本を読んだよ」と話しかけられ、オススメの本をリストしたメモをもらってしまうようです。背景文化を共有しない人たち同士でうまくやっていくために、社交的な風土になったとも言われますが、著者は、その感じを人々に残された(良い意味でのだと思いますが)「子どもの部分」(文庫版あとがき)と表現しています。実際にアメリカを訪れると、この表現の意味や雰囲気を感じられると思います。

この本は、初めてアメリカに出張に行ったり短期滞在するときに、どういう感じで人と接せられるのか、を具体的な例とともに知っておくのにもよさそうです。

20140720読了(半分読んだところで3月の神奈川からの引越のときに迷子になってしまったものが今日発見されて、その日のうちにお風呂で読み切りました)